韓国留学ビザ新制度:TOPIK4級で財政証明免除、就労・滞在要件も厳格化へ
韓国法務省は留学生ビザの新方針を発表しました。TOPIK4級取得で財政立証が免除される一方、アルバイトには3級以上が必須となり、卒業後の滞在にも語学力が問われます。英語学位を検討する日本の受験生への影響と対策を解説します。
この記事のポイント
- TOPIK4級以上で留学ビザ申請時の財政立証が免除される新制度を発表
- アルバイトにはTOPIK3級以上が必要となり卒業後の滞在期間にも語学力が直結
- 70大学1,000学科以上ある英語学位志望者にも韓国語習得の影響が及ぶ懸念
韓国法務省が留学生ビザ制度の改革案を発表
韓国政府は、外国人留学生の受け入れ拡大と国内統合を両立させるため、学生ビザ制度の大幅な見直しを進めています。2026年10月7日、韓国法務省は「外国人留学生ビザ制度改善協議会(Consultative Council on the Improvement of the Foreign Student Visa System)」による決定事項を発表しました。
この協議会は2026年4月に設置された組織で、イ・ジンス法務部長官代行(Acting Minister of Justice Jinsoo Lee)が議長を務め、高等教育および移民政策の専門家が参加しています。同協議会は、韓国が最大40万人の留学生を迎えるための戦略を策定する役割を担っています。
今回発表された改革案の中心にあるのは、留学生に対して渡航前または学修開始前に中級レベルの韓国語能力を身につけるよう強く促すインセンティブと要件の設定です。これにより、十分な語学力を持つ学生には手続き面での優遇措置が与えられる一方、語学力や就学意欲が不十分とみなされる場合には滞在や就労に厳しい条件が課されることになります。
改革の背景:留学生30万人突破と受け入れ拡大への課題
韓国における外国人留学生の数は近年急速に伸びています。韓国政府は当初掲げていた「留学生30万人」という数値目標を、目標年より2年前倒しとなる2025年半ばに達成しました。2026年2月時点での外国人留学生数は31万4,000人に達しており、政府が目指す40万人という目標規模も現実的な視野に入っています。
しかし、急激な受け入れ拡大に伴い、留学生が韓国の大学での学業を修めることや、地域社会・キャンパスへ適応することにおいて課題が生じています。特に韓国語能力が低いまま渡航した学生が、講義についていけなくなったり、日常生活で孤立したりする事例が問題視されてきました。
韓国政府は、留学生が確実に学業で成功を収め、地域社会へ溶け込めるようにすること、そして国内の教室や地域住民の間で留学生受け入れに対する社会的理解を維持し続けるために、制度的な枠組みの刷新が不可欠であると判断しました。受け入れ規模の拡大を継続しながらも、質の確保と社会統合を重視する姿勢へと舵を切っています。
韓国語能力(TOPIK)に応じた新たなインセンティブと規制
新方針では、留学生の韓国語習得状況に応じて、ビザ申請、アルバイト、卒業後の滞在期間などに明確な差が設けられます。
財政能力証明の免除と保証金制度
最も大きな優遇措置の一つが、ビザ発給要件の緩和です。以下のいずれかの語学基準を達成している留学生は、留学ビザ取得の際に求められる財政能力の立証(預金残高証明など)を行うことなくビザを取得できるようになります。
- 韓国語能力試験(TOPIK)4級の取得
- 社会統合プログラム(KIIP)4段階の修了
TOPIKとは韓国の国立国際教育院が実施する公式な韓国語能力試験であり、4級は中級レベルに相当します。通常、留学ビザの申請では滞在費を支弁できる資金証明が求められますが、語学基準をクリアすることでこの手続きが免除されます。
一方で、ビザの期限を超えて不法滞在するリスクが高いと判断された学生や、学業よりも就労を優先する懸念があるとみなされた学生に対しては、「留学経費保証金制度(Study Expense Security Deposit System)」が適用されます。この制度が適用された場合、韓国滞在中の一定期間における生活費などの資金を事前に預託することが義務付けられます。
アルバイト許可とTOPIK 3級要件
留学生が韓国内でアルバイト(時間外就労)を希望する場合の審査も厳格化されます。アルバイトの許可基準として、学業成績に加えて韓国語能力が評価されることになり、少なくともTOPIK 3級以上の語学力が求められます。
これにより、日常会話や学業に最低限必要な韓国語力を満たしていない留学生は、現地でアルバイトをして生活費を補うことが困難になります。
卒業後の滞在期間とE-7ビザ優遇策
大学を卒業した外国人留学生が韓国国内に留まるための条件にも、韓国語能力が直結します。卒業後の滞在許可期間は1年から3年の範囲で設定されますが、その長さは学生の韓国語の習熟度と「就業準備状況(preparation for employment)」によって判断されます。
さらに、特定分野の留学生が卒業後も韓国との強固な結びつきを維持できるようにするため、仮称「韓国留学同窓生訪問ビザ(Korean Study Alumni Visitor Visa)」と呼ばれる新ビザの創設も計画されています。対象となる分野には、以下の領域が含まれます。
- 理工系分野(science and engineering)
- 製造業分野(manufacturing)
- 専門技術分野(specialised technical fields)
これらの専攻分野で学位を取得した留学生は、必要な韓国語要件を満たしていることを条件に、熟練技能労働者向けビザである「E-7ビザ」の審査において優先的な扱いを受ける方針です。
日本の受験生・保護者への影響と英語学位志望者の注意点
近年の韓国の大学では、英語のみで卒業できる学部プログラムが急速に増えており、日本の高校生にとってもアジア圏の進学先として選択肢に挙がるケースが増加しています。元記事によると、現在韓国では70以上の大学、1,000以上の学部・学科において英語開講の学位プログラムが提供されています。英語で学位が取得できる環境は、韓国が世界各国から多様な留学生を引きつけ、留学生数を急増させた最大の要因の一つでした。
しかし、今回の制度変更は、英語での学修を主目的として韓国への留学を考えている層にとって大きな注意点となります。
TOPIK 4級(またはKIIP 4段階)の取得は容易ではなく、集中的な学習を行っても少なくとも2年程度を要するとされています。英語開講プログラムに入学する場合であっても、資金証明の免除を受けたい場合や、現地でアルバイトを行いたい場合(TOPIK 3級)、さらには卒業後に韓国企業への就職を目指して滞在期間を確保したい場合には、相応の韓国語学習が避けられなくなります。
現時点では、英語学位プログラムに在籍する留学生に対してどのような例外規定や経過措置が適用されるのか、あるいは一律に韓国語基準が課されるのかについて、大学の募集要項や公式発表を細かく確認する必要があります。留学生への具体的な適用条件や開始時期については、出願先大学や韓国法務省の公式情報を必ず確認してください。
今からできる準備と確認事項
韓国の大学への出願を検討している中高生や保護者の方は、以下の点に留意して準備を進めることが推奨されます。
出願要件とビザ要件を分けて把握する
大学の入学審査において英語スコア(TOEFLやIELTSなど)だけで出願できる場合でも、ビザ申請時の資金証明免除や現地生活でのアルバイト許可、卒業後の滞在許可にはTOPIKなどの韓国語スコアが影響します。「大学に合格すること」と「現地で希望通りの滞在・生活環境を整えること」の双方の条件を整理しておく必要があります。
早期の韓国語学習計画を立てる
英語プログラムでの進学を目指す場合でも、現地での生活適応や就労・就職の選択肢を広げるためには、渡航前からTOPIKの受験を見据えた学習を進めておくことが有効です。TOPIK 3級や4級の取得には一定の期間を要するため、高校在学中から段階的に学習を進めるスケジュールを組むことが現実的です。
専攻分野と卒業後のキャリアパスを照合する
理工系、製造業、専門技術分野に進む学生には、卒業後のE-7ビザ優遇措置など、韓国国内での就業に向けた道筋が用意されつつあります。将来的に韓国での就職や滞在を視野に入れている場合は、自身の専攻が優遇分野に該当するかどうか、またその際に必要とされる韓国語要件が何級であるかを注視しておく必要があります。
まとめ
韓国政府が発表した留学生ビザ改革は、目標とする40万人の受け入れに向けて「量から質への転換」を明確にしたものです。中級レベル以上の韓国語能力(TOPIK 4級)を持つ学生には財政証明免除などの強いインセンティブが与えられる一方、語学力が不足している留学生には就労や卒業後滞在の面で厳しい条件が設けられます。
英語学位プログラムを足がかりに韓国留学を検討している日本の受験生にとっても、韓国語の習得は現地での生活の質や将来の選択肢を左右する重要な要素となります。制度の正式な運用開始時期や詳細な適用範囲については、韓国法務省および各大手大学の公式発表を随時確認し、最新情報に基づいた計画を立てていきましょう。
出典・参考
- South Korea introduces new incentives for foreign students to develop Korean language skillsICEF Monitor(2026.10.28)
本記事は上記の公開情報をもとに、MINISTUD編集部が日本の受験生・保護者向けに要点と影響を解説したものです。出願要件や日程は年度・大学ごとに変わるため、最終的には必ず各大学・公式機関の最新情報をご確認ください。
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